「基本概念」は難敵
かつては、土木関係のコンサルタントをやっていた。
7~8年前だったと思うが、いわゆる「現場写真」をデジタルデータで提出・保存する、という話がちらほら聞こえ始めてきた。
当時は、コンパクトデジカメの主流が100~150万画素クラス。デジタルデータからのプリントもまだまだ料金が高く、銀塩フィルムの役割を完全に代替させるのはかなりムリがある状況だった。
業務に関連して、デジタルデータと銀塩フィルムのメリット/デメリットを客先に説明し、納得させるための理論武装の一貫として読んだのがこの一冊。
結局のところ、客先に説明するときにはこの本の情報は基本的には不要だったのだが。
「現場の現実に対する対応方法」を考える上では、この本で説明されているような「技術の基本概念」が重要になることは(表面的には)あまりない。
翻訳の現場でも、同じようなことが言える。
乱暴な言い方になるが、翻訳者はその「基本概念」に基づいた技術を実際に使いこなす立場にいるワケではないため、その「基本概念」を理解していなくても、翻訳そのものを行う上で必ずしも支障が出るワケではない。
しかし、科学技術には、必ずそのベースとなっている基本的な「科学的概念」がある。その「科学的概念」を多少なりとも把握しているのといないのとでは、その上に立脚している技術の理解度に差が生じる。
「基本概念」をおぼろげにでも把握しておくことは、小説を読む場合で言えば、その作品のジャンルや背景、作者のスタイルを把握しておくことに似ているかもしれない。
書かれている「ストーリー」に対する「嗅覚」が決定的に違ってくる。
この「基本概念」というヤツは、その道のプロであればおそらく大学の学部課程(それもかなり早い段階)で演習の繰り返しによって叩き込まれる内容である場合が多いワケで、それを数冊の本だけでモノにするのはそもそもムリ。
だが、チャレンジするだけの価値は、いつの場合にでもある。
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2008-07-06 01:00 pm | Bookshelf/ 理工学書

