[U]【書評】南直哉「恐山~死者のいる場所」

恐山―死者のいる場所―(新潮新書)
新潮社 (2012-10-12)
売り上げランキング: 10,359

私が「著者買い」をする書き手のひとり、南直哉師。

およそ宗教家らしくない冷徹な現実の見方・語り方をする著者が、恐山という日本の霊媒信仰のメッカみたいな場所の菩提寺の院代(副住職)を務めている、というのは、出来の悪い冗談のように見えます。

しかし、この本を読むと、著者が今の立場で恐山にいる、というのはが非常に(文字通り「有り難い」)幸運なことだった、と思わざるを得ません。

まだ行ったことがないので想像でしかありませんが、おそらく非常にプリミティブな形での「生者が死者に対して抱く想い」が積み重ねられている恐山。

そこでは、生者の側、つまりは私たち自身の中に内包されている(他者の/自身の)「死」への想いがむき出しにされているのでしょう。

そこに見える「死/死者」にまつわる風景から、生者の側がどう生きていくべきかを考えるヒントを提示するのに、著者を措いて他に適役となる人はいません。

そういう意味でこの本は希有な一冊であり、「有り難い」幸運の賜物と言えるでしょう。

 

この本、初版は2012年4月発行。
東日本大震災から約1年後となっています。

大震災の後に書かれたというこの本の「あとがき」は、非常に心を打ちます。
ぜひ、手にとって読んでいただきたい一冊です。

 

以上、こういうテーマで書くにはまだまだ筆力が足らんなぁ、と思っている大越でした。

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