[U]「堕ちぬく」ことのできない者の哀しみ〜読書メモ「あれよ星屑」

読み終わって感じるのは、「堕ちぬけない」哀しみか、「堕ちぬいた」カタルシスか。

戦後の闇市で生きる復員兵である主人公。

坂口安吾が「堕落論」で語る(生き抜くために)「堕ちた」人々(闇屋・娼婦・戦災孤児・戦争未亡人etc.)の中で、同じように「堕ちぬく」ことができずに苦悩する。

彼の周囲の「堕ちた」人々にしてもさまざまな葛藤があり、誰もが「堕ちぬいている」訳ではない。

「弱いから堕ちるのではない。人間だから堕ちるのである」と言いつつ、
「人間は、堕ちぬくには弱すぎる」と言い放つ安吾の言葉は、
いささか切れ味が鋭すぎて痛い(そこが安吾の持ち味であり、「堕落論」の凄味ではあるのだが)。

「堕ちぬくことができない」人間の哀しい可憐さを、そういう「弱い」人間に近い視点から、ひときわ美しく描き出した物語である。

ぜひとも一読することをおすすめする。

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