「ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと」で引用されていた一冊。
これまた一気読みしてしまった。
「実存主義」の代表的哲学者が現代の京都に住む女子高校生のところにやってきて、哲学を語る。
この「京都」という舞台が抜群にテーマとマッチしている。
京都以外の街では、ここまで引き込まれる物語にはならなかったんじゃなかろうか。
キルケゴールやショーペンハウアーは高校生の頃に背伸びして読んだが、まるで記憶に残っていない。
ニーチェは読みかけて挫折した。
あの頃こんな入門書があったら、と思う。
その反面、あの頃の自分では、今この本を読んだときのような気付きを得られなかったかも、とも思う。
まぁ、それでもいい。
この本の中でヤスパースが言うように、
「万人に一致する答えがあるわけではないのが哲学」
であるとするならば、あの頃の自分と、今の自分とでしっくりとくる答えが違っても当然だし。
結局、自分の人生には自分自身で向き合うしかなく、そこでの「哲学」は自分自身だけのものとなる。
タイトルが「哲学のこと」を教えてくれた、となっていて「哲学を教えてくれた」ではないのも、そのことを暗示している。
主人公は17歳だが、「人の生き方」と向きあおうとする人であれば、この本がひとつの良い羅針盤になるだろう。
年齢問わず読んでおいて損のない一冊である。