働かざる者、食うべからず。
それが「真っ当」であると思って長年生きてきたが、実はコイツは搾取する側によってかけられた呪縛なんじゃないか、と思えてくる1冊。
著者はアナキズム(特に大杉栄)の研究者で大学の非常勤講師などをしているが、実質的には年金生活者の両親に寄生するニート(著者本人が書いている)。
だからこの本を読んだ人の大部分は、「バカなことを言ってないでマトモに働け」と言うだろうし、自分も10年前であればそういう反応しかしなかったと思う。
と言うか、タイトルを見た時点で読もうともしなかっただろう。
しかし、文明が進歩して「AIやロボットに仕事が奪われる!」ってな話が現実のものになりつつある。
というか、「どうやって人間が働かなくてもすむようにするか」という方向に進歩するのが文明である。
それを是として数千年やってきて、これからもそれでやっていくとすれば、いずれ(このペースでいけば近いうちに)人間は「働かなくていい」状況になるはずである。
そうなると、「働かざる者、食うべからず」の前提が崩れる。
「働かなくていい」んだから。
そういう世界の到来に向けて必要なのは、「はたらかなくても、たらふく食べられる」社会を構想するための基本となる哲学なのではなかろうか。
本書には、その哲学に向けたヒントが数多く詰まっている。