キリンが好きな少女がキリンの研究者となり、キリンの謎をひとつ解き明かすまでの物語……なのだが、いやもう面白い。
とあるブログの書評で存在を知り、気になって購入したらその日のうちに一気読みしてしまった。
謎解きとしての面白さ
筆者はキリンの解剖学的研究によって、他の哺乳類と同様に7個しかない頚椎に加えて胸椎1個を「8番目の首の骨」として使うことで、首の可動域を大きく広げていることを突き止めた。
この謎解きの過程を、研究者らしく淡々としていながら心の動きがじわじわと伝わってくる筆致で書かれると、読む側としてはワクワクがとまらなくなってくる。
そしてさらに、この世界にはまだまだわかっていない謎がたくさんあるのだ、ということも感じさせてくれる。
タイトルを見たとき「キリンの解剖学的研究なんて、とっくに全部結果が出ちゃってるんじゃないの?」と思っていたのだが、さにあらず。
キリンというある意味身近な動物(日本で飼育されているキリンの数はアメリカに次いで世界2位らしい)にも、まだまだ謎が隠されていることがこの本を読むとよくわかる。
次の世代を担う子どもたちへ
まず、これから研究の世界を目指そうという子どもたちに是非読んで欲しい。
ひとつひとつ謎の解明に近づいていく過程の楽しさ(と苦しさ)がひしひしと伝わってくる。
(私自身は「苦しさ」の方に負けてドロップアウトしてしまったクチなので、心の奥深いところにシクシクと痛みを感じながら読んだのだが……(笑))
筆者は自身でも書いているが、研究者としては非常に「運が良い」。
おそらく、彼女の順調な経歴に嫉妬する研究者志望者やドロップアウトした元・研究者は多いんじゃなかろうか。
(たとえば「バッタを倒しにアフリカへ」の筆者の苦闘ぶりと比べると、大きな差を感じる)
その彼女ですら、現在就いているのは3年という任期付きの研究職であり、研究者として安泰、というわけではない。
そんなに甘くない世界であることは重々承知しつつも、もう少し何とかならないものかね、とも思う。
せめてこの本を読んで研究者を目指す子どもたちが、研究してみたいことを(将来への不安について釘を差されることなく)自由に語れる世の中にできれば、と切に思う。