新語の表現には割と寛容な方だと思っている大越です。
先日、書店を歩いていたら、平積みになっていたこんなものに目が止まりました。
「あぁ、争続ね。いろいろ大変なことになるらしいし、大変やねぇ」と、通り一遍の感想を抱きつつ通り過ぎたのですが、その後「ん? 待てよ……」と何か引っかかるものが。
「そうぞく」って、普通は「相続」ですよね?
字面から「争続」の意味はよくわかります。
国語辞典の定義風に言えば「相続において争いが生じること。またはその争い」といったところでしょうか。
これは「造語」だと思うのですが、このDVDのタイトルでは特に造語・新語的な扱いを感じさせない使われ方になっており、ある程度以上は普通名詞化している様子。
職業柄、こういうことは気になる質なので軽く調べてみました。
とりあえず、手元にある以下の国語辞典での記載を確認。
- 広辞苑第五版
- デジタル大辞泉
- 明鏡国語辞典
(いずれもカシオの電子辞書に入っているバージョン)
いずれも「そうぞく」の漢字表記としては「相続」のみしか記載されていません。
Google先生に訊いてみると、「争続」を使っているページが結構な数(35,000件以上)ある模様。
「もしかして: 相続」と確認されることもありませんでした。
カッコ書きにしたり本来の表記である「相続」と併記したりして、造語・新語であることを示唆しているページもありますが、特に注釈もなく一般的な名詞と同様使っているページも少なくありません。
それなりに定着してきている表現のようですね。
本来の表記である「相続」と同じ読みで、字面から意味合いが想像しやすいため、そのうち(書き言葉の中で)特に造語として扱わなくてもよいレベルまで普及していきそうな予感。
翻訳原稿の中に出てきたら、ちょっと厄介ですねぇ。
この手の造語の翻訳って、ターゲット言語における「造語スキル」がないと、やたらに説明的に訳すしかなく、ピンとくる表現にならないので……。