Google検索は確かに便利だが、こちらが「なぜ、それを知りたいのか」までは斟酌してくれない。
「知」をつなぐ営みは、人と人との結びつきがあってこそなのだと感じる作品。
舞台は架空の街の公立図書館で、その図書館のレファレンス・サービス担当の新人司書が主人公。
主人公がその図書館に持ち込まれるレファレンス依頼に応えるプロセスの中での交流が描かれている。
翻訳屋にとっては「調べもの」が仕事の一部(というか大部分)なので、自然と主人公に感情移入してしまうのだが、この作品ではレファレンスを依頼する側の人の「知りたい」という想いがきちんとすくい上げられていて、それがとても心地よい。
他人から見れば価値のないものに見える「知」が、ある人にとってはとても重要な場合がある。
そういう機微を丁寧に描くことで、「知らなかったことを知る」ことの意義を実感させる良作である。
同時に、裏側でその仕事に携わる人々に光をあてることで、(特に予算等の面で厳しい状況におかれている公立の)図書館の現状とあり方も考えさせる内容になっている。
本好きなら絶対に読んでおくべき作品である。
現在、5巻まで発売中。