「良い子は真似しちゃいけません」「こんな日本に誰がした」「人間到る処青山あり」などなど……。
さまざまな言葉が思い浮かぶ1冊。
ポスドクの昆虫研究者がホンモノの「昆虫学者」(期限なしで身分が保証される研究ポストで研究できる学者)を目指して、実績を作るためにアフリカへと乗り込む。
アフリカで大きな被害を引き起こすサバクトビバッタについては、実験室での研究成果は多数発表されているものの、フィールドワークによる研究は少ない。
そこで勝負すればイケるかも! というのが筆者の目論見だったのだが……。
筆者の彼の地での悪戦苦闘とその結果は本書をお読みいただくとして(ムチャクチャ面白いので是非)、いろいろと考えさせられる点も多数。
年齢から推測すると、筆者はおそらく「ポスドク問題」がちょうど顕在化・深刻化してきたタイミングで大学院を修了したんじゃなかろうか。
それから約10年が経過していると思われるが、状況は少なくとも改善はしていないように見える。
筆者は自身のアフリカ行きを「賭け」だったと言う。
科学研究は未知の世界の探求なので、ある程度「賭け」の要素が含まれるのは仕方ないが、路頭に迷う事態になるかもしれないような「賭け」をしなければ研究が続けられない、というこの国の状況はお粗末過ぎると言わざるをえない。
そのあたり、筆者はうまくセルフプロデュースすることで乗り越えていく(この過程がなかなか参考になる)のだが、「研究者」がそれを自前でやらなきゃいけない状況には、やはり釈然としなかったりする。
とりあえず、アフリカでのフィールドワークにまつわるあれこれは単純に面白い。
将来、科学者をめざすかもしれない子どもたちにも読んで欲しいが、これを真似しなくてもいい世の中にしないことには……、とも思う。