[U] 言葉にならないものを言葉にする〜読書メモ「羊と鋼の森」

最近、(特に新しい)フィクション作品をほとんど読まなくなっている。

この本も、映画になって宣伝されたのを見て、はじめて「ピアノの調律師」が主人公の作品と知って興味がわいた。
映画の公開に合わせてKindle版が値引きされていたので購入。

とても好きなタイプの「優しく美しい小説」。

一言で言ってしまえば主人公である新米調律師の成長物語。
その中で、調律師やその顧客が、自分の探し求める音を相手に伝えようとして言葉を尽くす。

本来は言葉にできないはずの「音の景色」を言葉にしようとする。
言葉にできないものを伝えようとする相手の言葉から、相手の想いを読み取ろうとする。

その過程には、どうやっても不完全なものにしかなり得ない人間のコミュニケーションの切なさが凝縮されている。

だからこそ、そのひとつの到達点として奏でられる音が美しい風景として心に響いてくる。

言葉の限界とそれを乗り越えようとする意志の物語、と言えるかもしれない。

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